ここ1,2週間でコロナウイルス感染者が急激に増えています。
今までそこまで感染者が出ていなかった地方でもどんどん増えており、恐らくしばらくの間は増加傾向になるのではないでしょうか?
警備員として働いている方たちの中には、デパートやショッピングセンター、病院など不特定多数の人が出入りする中で仕事をしなければならない方もいるでしょう。いつ自分も感染するかわからないと不安に感じている方もいるかもしれません。
労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険給付の対象となるのか
あまり考えたくはないですが、今後仕事中にコロナウイルスに感染してまうことも、十分に起こり得る状況になってしまいました。
そこで少し疑問に思うのが、「仕事中にコロナウイルスに感染してしまったら労災として取り扱ってくれるのか?」です。
結論から言うと、答えはイエスです。
”業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。”
と、厚生労働省HPには書かれており、仕事中に感染したと認められれば労災として認定されるようです。
どのくらいの人が労災として認定されているのか?
厚生労働省HPで公開されている、2020年11月18日現在のデータですと、労災の申請があった件数が2132件、労災認定された件数が1089件、うち支給済みが1064件となっており、結構な数の人が申請をだし、半数くらいは認められているようです。
労災認定事例
厚生労働省HPで労災認定事例がいくつか書かれていますので、警備員や警備会社にお勤めに皆様でも対象になりそうな事例をいくつか紹介します。
事例1 飲食店店員
飲食店店員のEさんは、店内での業務に従事していたが、新型コロナウイルス感染者が店舗に来店していたことが確認されたことから、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署における調査の結果、Eさん以外にも同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められた。
以上の経過から、Eさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。
事例2 建設作業員
建設作業員のFさんは、勤務中、同僚労働者と作業車に同乗していたところ、後日、作業車に同乗した同僚が新型コロナウイルスに感染していることが確認された。Fさんはその後体調不良となり、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署における調査の結果、Fさんについては当該同僚以外の感染者との接触は確認されなかった。
以上の経過から、Fさんは新型コロナウイルスに感染しており、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであると判断されたことから、支給決定された。
事例3 工事現場施工管理業務従事者
工事現場の施工管理業務従事者であったHさんは、担当する現場の施工状況を管理する業務に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Hさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間に、換気が不十分な工事現場の事務室において日々数時間現場作業員らと近接な距離で打合せ等を行っており、Hさんの他にも、新型コロナウイルスへ感染した者が勤務していたことが認められた。
一方、発症前14日間の私生活については、自宅で静養するなど外出はほとんど認められず、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、換気が不十分な部屋で、他の作業者と近接な距離で打合せを行うなどの状況から、当該労働者の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Hさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、複数の感染者が確認された労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。
事例4 建設資材製造技術者
建設資材の製造技術者のIさんは、品質管理業務に従事していたが、発熱、倦怠感の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Iさんの感染経路は特定されなかったが、発症前14日間に、勤務していた職場の事務室において品質管理に係る業務を行っており、Iさんの他にも、新型コロナウイルスに感染した者が勤務していたことが認められた。
一方、発症前14日間の私生活については、日用品の買い物で家族と自家用車で外出したことが1日あったのみで、家族以外の接触はなく、他人との濃厚接触はなかったことが確認され、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、新型コロナウイルスへ感染した者が事務室を往来していること、他の社員との会話の機会等における飛沫感染を否定できないこと等を踏まえると、当該労働者の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Iさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、複数の感染者が確認された労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。
事例5 小売店販売員
小売店販売員のJさんは、店頭での接客業務等に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Jさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人と接客し商品説明等を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
一方、発症前14日間の私生活での外出については、日用品の買い物や散歩などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、接客中の飛沫感染や接触感染が考えられるなど、当該販売員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Jさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。
事例6 港湾荷役作業員
港湾荷役作業員であったLさんは、トラックへの荷渡し業務等に従事していたが、発熱の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
労働基準監督署において調査したところ、Lさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間に、荷渡しの際の確認のため、日々不特定多数のトラック運転手等と近距離で会話を行っており、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
一方、発症前14日間の私生活での外出については、日用品の買い物などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
医学専門家からは、事業場において不特定多数の者との近接・接触の機会が認められ、当該作業員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
以上の経過から、Lさんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客等との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。
後半の事例を見ていただければわかるように、必ずしも職場で感染したと確認できなければいけないのではなく、感染してもおかしくない職場環境にあり、なおかつ他の場所で感染した可能性が低いと認められれば労災として認定される可能性は高いようです。
まとめ
以上のように万が一仕事中に感染してしまった、感染した可能性が高い場合には労災認定がされます。
コロナウイルスに感染しないように対策するのが一番ではありますが、もし感染してしまった場合には職場の労災担当に相談してみましょう。
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