【施設警備】異常を見逃さない「巡回」のコツと全チェック項目|不審者遭遇時の間合いとは?

教育・実技

1. 導入

施設警備における「巡回」は、単なる散歩ではありません。 五感をフル活用し、異常の「前兆」に気づくことこそがプロの仕事です。 この記事では、基本の巡回形態から、現役指導教育責任者だからこそ知っている「死角をなくすテクニック」までを解説します。


2. 巡回の主な形態(基本知識)

巡回時刻を主眼とした区分

定時巡回・・・あらかじめ定められた時刻に行う巡回
臨時巡回・・・定時巡回以外に随時行う巡回

巡回経路を主眼とした区分

定線巡回・・・あらかじめ指定された経路に従って行う巡回
乱線巡回・・・巡回経路の指定は行わず、その都度警備員の判断によって、自由な経路を選択する巡回

巡回人数を主眼とした区分

単独巡回・・・警備員1名が単独で行う巡回
複数巡回・・・警備員が2名以上で行う巡回

巡回方法を主眼とした区分

徒歩巡回・・・徒歩によって行う巡回
車両巡回・・・自転車、バイク、自動車等の車両を使用して行う巡回

巡回地域を主眼とした区分

屋内巡回・・・巡回経路が警備対象施設の内部(屋内)に限定されている巡回
屋外巡回・・・巡回経路が警備対象施設の外部(屋外)に限定されている巡回

巡回目的を主眼とした区分

刻時巡回・・・警備員が打刻機能とその記録用紙を内蔵する巡回時計を携帯し、巡回経路上の重要箇所に設置してある打刻用鍵を使用して、それぞれの箇所にある巡回時刻を記録します。

【実務ポイント】 多くの現場では、契約書上は「定時巡回」となっていても、実際にはルートを変える「乱線巡回」を組み合わせるのが常識です。 「いつも同じ時間に、同じ場所を通る警備員」は、泥棒にとって一番御しやすい相手だからです。


【重要研修項目】「巡回の省略」が引き起こす懲戒リスクと発覚の実態

巡回業務に慣れてくると「毎日同じ施設だし、今日も異常はないだろう」という思い込みから、指定されたルートの省略や、休憩室から巡回時計の打刻ポイントへ直行するといった不正の誘惑に駆られることがあります。

私が管理職として対応した過去の事案でも、現場の警備員による巡回のサボりが発覚したケースが複数ありました。発覚の契機は打刻システムの間隔異常だけではありません。「同僚の警備員からの内部通報」によって不正が明るみに出た事例や、最も重大なケースでは「施設設備の破損が数日後に顧客側から発見され、記録を遡って調査した結果、該当箇所を警備員が指定通りに巡回(点検)していなかった事実が露呈した」という事態もありました。

わずかな距離の省略であっても、結果として異常の発見が遅れれば「警備業法に基づく虚偽報告および重大な契約違反」として厳格な懲戒処分の対象となり、現場からの即時退場を命じられます。「今日も何も起きていないこと」を自分の足と目で確実に証明することこそが、警備員自身の身を守る最大の防波堤となります。

3. 巡回時の留意事項

巡回業務を効果的に実施するためには、警備業務対象施設の実態把握や、社員との良好な人間関係の構築が大切です。また、巡回時には細心の注意力と警戒心を持って勤務することが大切です。

巡回時には以下のことに留意して行う事が大切です。

事前準備
  • 警備業務対象施設における警備上の重点箇所、巡回時の点検事項、巡回の経路、巡回要領等を確認し、巡回の目的意識を明確にしておく。
  • 防犯・防災用設備の位置を確認しておくとともに、それらの取り扱い方法等についても確認しておく。
  • 防犯的見地から、注意すべき建物の構造及び過去に発生した犯罪の傾向と種別を研究しておく。
  • 巡回実施中の着眼事項について十分に理解しておく。特に、過去の代表的な事故事例を検討し、同一環境の場所を点検する際の着眼点とする。
巡回出発前
  • 巡回勤務出発前に巡回コースを再確認し、前回の勤務者からの申し送り事項をよく理解しておく。
  • 鍵、懐中電灯、筆記用具等の装備を点検しておく。
  • 残業届け、作業届け等を確認し、その日の残留者や、外部業者の状況を把握しておく。
巡回実施中
  • 巡回は定められた通りに的確に行い、その目的達成に努める。
  • 所定の時間に巡回し、異常な音、におい等を感知したら、その原因を最後まで突き止めようとする。
  • 屋外の巡回は明るい電灯や、月明かりの中の歩行を出来る限り避け、不審な兆候、不審者の気配が感じられたら、物陰か暗がりの中に身を置いて、その実態の確認に努める。
  • 建物の角を曲がる場合は、曲がる手前で数秒間停止し、耳を働かせて安全確認をしてから大きく曲がるなどの安全行動をとる。
  • 巡回中は自分の足音、扉を開閉する際の音にも注意し、不要な音を出さないようにする。また不必要なライトの点灯を避け、巡回の行動を察知されないようにする。
  • 扉を開けて建物内に入るときは、開けてから内部の周期、人の気配等を窺った後に入るなど、危害予防に注意する。
  • 施錠箇所を開けたときは、その後確実に施錠する。またもともと施錠してある箇所も、きちんと施錠されているか確実に点検を行う。
  • 窓の未施錠を発見した時は、まず、室内から外部目視点検し、さらに窓から顔を出し、周囲を十分に目視して周囲に不審者がいないか確認する。
  • 未処理の吸い殻があった場合には、所定の吸い殻缶等に確実に処理する。
  • 消火器が転倒している等設備機器が所定の状況にない場合は、周囲の安全を確認した後、機器の点検をして所定の状態に戻しておく。
  • 倉庫室、トイレの掃除器具置き場等も不審者が潜んでいる可能性もあるので確実に点検する。
  • 不審者に遭遇した場合は、十分な間合い(昼は3歩、夜は6歩程度)をとり、身分確認をする。
  • 取り扱った事項、その処置、特異事項はその都度メモする。
巡回終了後

巡回中に見聞きした事項、取り扱った事項、その処置その他得意事項について勤務責任者に報告するとともに、次回巡回車に確実に申し送りをし、次回巡回時の着眼とさせる。
巡回中に発見した改善点等については、必ず報告書に書いて提出する。

プロがやっている「曲がり角」の技術

建物の角を曲がる時、何も考えずに曲がっていませんか? ベテランは**「カッティングパイ(Pie Slice)」**の要領を使います。 壁沿いにいきなり曲がるのではなく、少し距離を取り、角を中心にして円を描くように徐々に視界を広げていく方法です。 これにより、出会い頭の衝突を防ぎ、先に相手を発見できます。

不審者との「間合い」

マニュアルには「昼は3歩、夜は6歩」とありますが、これはあくまで目安です。 重要なのは**「相手の攻撃が届かず、かつ逃げられない距離(約2メートル)」**を常に意識することです。


4. 注目すべきチェックポイント

屋内巡回

  • 最初の巡回の時に見た室内の状況を記憶しておき、次の巡回時にその変化の有無に注意する
  • 扉、窓、シャッター等の開放、施錠の有無、破損個所の有無
  • 重要機密箇所の施錠の有無
  • 金庫及びロッカーの施錠の有無の確認
  • 階段、通路、トイレ等の潜伏可能箇所
  • 吸い殻及び吸い殻入れ等の日の不始末
  • 冷暖房器具(石油・ガス・電気)の後始末
  • 厨房・給湯室等の火気使用場所の後始末
  • 電気器具のスイッチの切り忘れ、電灯、OA機器、各種配線類の故障または過熱の有無
  • 外観点検における消火器等の消火設備、警報設備、避難設備、防火区画等
  • 避難通路、避難口、防火戸等の周辺状況の適否

未施錠を発見した際の「単独処置」は絶対厳禁

巡回中に窓や扉の「未施錠」を発見した場合、良かれと思って「自分で鍵を閉めて、異常なしとして報告する」ことは絶対にやってはいけません。
もし、あなたが施錠する前にすでに何者かが侵入し、物品が盗まれていた場合、後日お客様から「なぜ発見時に内部を確認し、報告しなかったのか」と責任を追及されます。結果として、あなた自身と会社が重大な損害賠償責任を負う事態に発展します。未施錠を発見した際は、絶対に単独で施錠して終わらせず、その場で待機して現場保存を行い、直ちに自社の責任者および契約先の担当者へ緊急連絡を行い、必ず複数名で内部の安全を確認するルールを徹底してください。

外周巡回

避難口等の周辺状況の適否

外部からの侵入に利用される恐れのある建物の構造、隣接家屋、ビル、電柱、隣家との板塀、樹木、建築足場等に対する防犯点検を確実にする。

外部からの侵入に利用される恐れのあるはしご等の除去

侵入される恐れのある出入り口のシャッター、扉、各部屋扉、窓の施錠

建築現場、工事用敷地内の材料置き場等の潜伏に利用されるおそれのある場所

変質者、泥酔者、浮浪者等の有無

たき火等の火気使用状況の確認及び後始末状況

外観点検における消火器等の消火設備、警報設備、避難設備等


6. まとめ

巡回は「何もなくて当たり前」の業務ですが、その「当たり前」を守るために、警備員は日々神経をすり減らしています。 漫然と歩くのではなく、「変化」に気づく意識を持つことが、あなた自身の身を守ることにも繋がります。

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