警備の現場で負傷者を発見した際、原則として救急隊の到着を待つのが鉄則です。 しかし、現場が火災の危険がある、あるいは崩落の恐れがあるなど、その場に留まることが危険な場合には、緊急的に負傷者を安全な場所まで搬送しなければなりません。
この記事では、負傷者の体に負担をかけずに移動させるための具体的な搬送方法を解説します。
1. 負傷者を動かす際の基本ルール
負傷者を移動させる必要があるのは、あくまで「その場にいることが生命に危険を及ぼす場合」に限られます。
- 姿勢の保持: 可能な限り体を水平に保ち、無理なねじれを与えないようにします。
- 患部の保護: 骨折などの負傷部位には直接触れないよう注意します。
- 首・脊椎の負傷が疑われる場合: 意識がない、高いところから転落したなどの場合は、首や脊椎(せきつい)を損傷している恐れがあります。この場合、安易に動かすと麻痺や致命的なダメージを与えるため、医師や救急隊が来るまで動かしてはいけません。
2. 身近な資材で作る「簡易担架」の作り方
警備現場にある「コーンバー」と「毛布」を活用して、2名で搬送できる担架を即席で作る方法です。
- 準備: コーンバー2本と毛布1枚を用意します。
- 手順①: 広げた毛布の3分の1の位置に、1本目のコーンバーを置きます。
- 手順②: そのコーンバーを包むように毛布を折り返します。
- 手順③: 折り返した毛布の端に、2本目のコーンバーを置きます。
- 手順④: 残りの毛布を、2本目のバーを包み込むようにさらに折り返します。 ※負傷者の体重で毛布が重なり、摩擦によって固定される仕組みです。
3. 肩を貸して歩かせる方法(1名で搬送)
足や足首を軽く負傷しており、自力での移動が可能な場合に行います。
- 要領: 右足を負傷している場合、相手の右手首を自分の右手で握り、相手の腕を自分の首にかけます。
- 支え方: 自分の左手で相手の腰を抱きかかえ、自分の左足を相手の両足の間に入れます。
- 歩行: 相手を少し吊り上げるようにして、負傷した足(右足)を地面につかせないようにして歩きます。
4. 緊急時の「引きずる」搬送方法
体重の重い負傷者を1名で至急移動させなければならない場合の方法です。
上半身を起こして引きずる(直接搬送①)
- 仰向けの負傷者の頭側から接し、上半身を起こします。
- 脇の下から自分の両手を差し入れ、相手の胸の前で「相手の両手首」をしっかり掴みます。
- 相手の上半身をやや引き上げ、後退するように引きずります。
四つん這いで引きずる(直接搬送②:煙が立ち込める場所など)
火災現場など、姿勢を低く保つ必要がある場合に有効です。
- 相手の手首をネクタイや紐、三角巾などで組み合わせて固く結びます。
- 結んだ腕の輪の中に自分の首を入れ、相手にまたがります。
- 四つん這いになり、相手の顔を持ち上げながら引きずります。
毛布を使って引きずる(間接搬送)
- 毛布を広げ、その対角線上に負傷者を仰向けに寝かせます。
- 毛布の端で相手の体を包むように折り込み、頭側の毛布の端を両手で持って引きずります。
まとめ
負傷者の搬送は「二次災害」を防ぐための最終手段です。 無理に動かすことで症状を悪化させるリスクを常に考慮し、移動させた場合は「なぜ動かしたのか」「どのような状態で移動させたか」を到着した救急隊員へ確実に報告しましょう。

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