火災の基礎知識

火災の基礎知識

炎

警備員の役割のひとつに、火災等の緊急時の対応があります。

 

現場に急行し、状況を確認したり、初期消火対応をしたり、119番通報をしたり、避難誘導をしたり、と様々な対応をしなければなりません。

 

このページでは、そもそも火災とはどんなものなのか、基礎的な知識について紹介していきたいと思います。

 

火災とは

 

火災とは、「人の意思に反して発生しもしくは拡大し、又は放火により発生して消化の必要のある燃焼現象であって、これを消化するために消火設備又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの」と定義されています。

 

もう少しかみ砕いていうと以下のようになります。

 

  • 人の考えや意図に反して、または放火という犯罪行為によって発生したもの
  • 放置すれば社会、公共にとって危険や被害が起こり得て、消化する必要のある燃焼現象
  • 消化するために消火器、消火栓、消防車等の道具、設備を必要とするもの

 

燃焼とは

 

燃焼という現象は、光と熱を伴う化学反応の総称を指します。
一般的に使われる燃焼というものは、空気中で物質が酸化され、その結果として熱、炎が発生する現象のことをいいます。

 

物が燃焼するためには、可燃物、酸素、熱源が必要であり、これらを燃焼の3要素といいます。

 

物が燃焼するためには、この3要素が同時に満たされていなければなりません。

 

つまり、火災を消化するためにはこの3要素のうちどれか一つでも取り除けばいいのです。

 

世の中の消火器、消火設備等はこの原則を活用して作られています。

 

消火方法

 

火災を消火する方法は大きく3つの手段に分かれます。

 

冷却消火法

 

熱源を取り去るか、発火点以下に温度を下げる方法のことをいいます。一般的には、水をかけることによって熱を奪うことが出来ます。

 

水は沸騰点が100℃であるため、いくら熱を吸収しても100℃以上の温度にならず、蒸発が始まると気化熱としてさらに大量の熱量を奪い去る性質もあって、冷却消火法には最適な手段であるといわれています。

 

窒息消火法

 

酸素を取り去るか、酸素の供給を断って消火する手段のことをいいます。

 

燃えているものに砂や、毛布をかけて空気を遮断することによって、酸素の供給を断って消火するようなものが一般的です。

 

除去消火法

 

可燃物そのものを取り去って消化する方法のことをいいます。例えば、ガスが燃えているときに、その元栓を閉じて火を消したり、森林火災等が発生した時に、延焼を防ぐために周囲の木その物を伐採したりする方法が一般的です。

 

その他

 

例外的な消火方法として、可燃物であるガスの濃度を燃焼下限いかに希釈する希釈消化法や、ハロゲン化物等の不触媒作用を利用した消化法などもあります。

 

煙と煙の移動速度

 

火災が発生すると煙であたりが充満します。火災による煙には、目や鼻の粘膜を刺激する成分が含まれていることが多く、目が開けられなくなったり、呼吸困難に陥ることもあります。

 

また、煙は横方向に対しては、秒速0.3〜0.8m程度ので移動します。人の歩行速度と比べても決して早いとは言えませんが、火災現場独特の雰囲気の中では十分危険な速度であるといえます。

 

さらに縦方向への移動速度は、秒速3〜5mと非常に早く、人が階段で駆け上がる速度よりはるかに速いです。高温の煙と同時に熱気も移動しているので、避難する際に上方向に逃げることは非常に危険であることがわかるかと思います。

 

有毒ガスの発生

 

火災現場では必ず一酸化炭素と二酸化炭素が発生します。なかでも一酸化炭素は人の血液中の酸素を運ぶ機能を持っているヘモグロビンと結合しやすく、ヘモグロビンと酸素の結合力の200〜300倍の結合力があり、全身に酸素不足を起こし、場合によっては生命の危険をもたらします。

 

火災現場では、燃焼している物質によってシアン化水素、亜硫酸ガス、アルデヒドなどの多くの有毒ガスが発生することもあります。

 

有毒ガスはもちろんですが、毒性がそれほど高くなくてもそれらのガスが充満することによって酸素濃度が減少することとなり、結果的に酸欠状態となる場合もあるので注意が必要です。

 

フラッシュオーバー

 

フラッシュオーバーとは火災によって発生した熱が建物内に蓄積され、天井、壁、内容物等の可燃物が加熱されて燃焼しやすい状態になり、部屋全体が一度に燃え出す現象で、建物の内部は非常に危険な状態になります。

 

フラッシュオーバーになる瞬間は、通常天井に着火するとき、または天井が不燃材の場合には火災室の近くの温度や火災からの熱放射強度が急激に上昇した時です。

 

フラッシュオーバーが生成されるまでの時間は、状況によって様々ではありますが、おおむね出火後3〜10分と言われています。

 

フラッシュオーバー状態となってはもはや初期消火は困難で、なおかつ非常に危険あると言えます。

 

もしフラッシュオーバーが発生した場合には、その後の消火活動は消防隊に任せ、警備員はそれ以外の補助活動に当たるようにしましょう。

 

避難経路の確保

 

消火活動を行う際は、避難経路をきちんと確保するということも重要な要素です。

 

特に煙の動きには注意を払い、消火活動に集中しすぎて背後に火や煙が回り込んでいるのに気づくのが遅れることがないようにしましょう。