静岡県 今秋にも「自家警備」
静岡県(川勝平太知事)は、今秋にも県発注の建設工事で建設会社従業員による交通誘導「自家警備」をスタートさせる。月内に県(交通基盤部)、県警(生活安全部)、県建設業協会、県警備業協会、国(関東地方整備局)などから構成する「交通誘導員対策協議会」を設置、自家警備の「実施要領」策定に着手する。
実施要領では、警備会社の交通誘導警備員ひっ迫状況など自家警備を行う場合の基準や、工事現場周辺の交通量が少なく安全確保に支障がない場所――など実施のための細部を詰める。
交通誘導警備員に代わり、交通誘導を行う建設会社従業員への教育(講習)は、静岡警協が行うことが既に決定。講習時間は、自家警備を例外的に認めている長崎県や広島県などを参考に、3?6時間程度の講習となる模様で、受講者には修了証を交付、一定の有効期限を設定し、期限ごとの更新を求める予定。早ければ10、11月にも県内複数箇所で講習会がスタートする見込みだ。県建設業協会担当者によれば、既に加盟社470社から480人が講習受講を希望しているという。
警備保障タイムズHPより引用
本紙は8月1日号で静岡県が今秋にも県発注の建設工事で建設会社従業員による交通誘導「自家警備」をスタートさせることを報じた。これを受けて本紙「紙面向上委員会」委員の早川正行氏に寄稿してもらった。自家警備が行われる原因に指定路線の警備に必要な検定合格警備員の不足があり、優秀な警備員を育成して自社の警備業務の質を高める経営者の意欲が問われている、と指摘している。
静岡県がスタートさせる自家警備は、交通誘導警備員の不足で指定路線で業務を行う資格を持った検定合格者の配置困難を理由に警備会社が業務依頼を断り続けたため、入札参加の断念や工期延長を強いられてきた建設業者の危機感が背景にある。発注者側である国や県など自治体からも、公共工事の計画が狂うことへの危機感がうかがわれる。そこで「静岡県建設業協会」が主導し、県の交通基盤部や県警の生活安全部、国の関東地方整備局、県警備業協会などで構成する「交通誘導員対策協議会」を設置し、自家警備の実施要領の策定に着手するというものだった。
建設会社は道路工事に伴う交通の安全を自身で確保するため、関係機関と連携し交通誘導のノウハウを学ぶための協議会を立ち上げた。いわば警備会社の「ギブアップ」を理由に道路工事現場の安全を建設会社自らが担う“警備員不要論”である。これに対しては「自家警備で道路工事現場の安全を確保できるか」という問題の根本に立って考えなければならない。同時に警備業界としては、検定合格警備員の育成に向けた対策強化を図る必要がある。
検定受講者・合格者が減少
静岡県建設業協会が加盟社に実施したアンケートによると、検定合格警備員の確保が難しいため指定路線の緩和を求める意見が9割に及んだ。自家警備を議論せざるを得ない原因の一つが検定合格警備員の不足であるなら、警備業としても事態を深刻に受け止める必要がある。
警備員特別講習事業センターの資料によると、2019年度の交通誘導1級・2級は前年度に比べ受講者・合格者が共に減少している。ここ数年、全国的に交通誘導の検定は、受講者・合格者とも減少傾向にある。
一方、検定合格警備員の配置義務がある雑踏警備2級や貴重品運搬2級の合格者数は前年度に比べ増加傾向にあり、交通誘導警備の合格者数の伸び悩みが目立っている。施設警備では配置義務がないにも関わらず、業務の「質」の向上を図るため、検定合格警備員の育成に会社を挙げて取り組んでいる。
検定合格者の配置義務という法規制は、業界としては画期的な「生活安全産業」の位置付けの中で生まれたことを思い起こす必要がある。国は全国的な体感治安の悪化などを背景に03年、全閣僚をメンバーとする犯罪対策閣僚会議を開催し、警備業について国民の自主防犯を補完・代行する役割を果たしているとして「生活安全産業」に位置付け、国の犯罪抑止体系に組み込むことを決定した。
この決定を受けて翌年に警備業法の一部改正が行われ、第18条の検定合格警備員配置義務という法規制が生まれた。この規制は警備業者に義務を課すだけではなくコストアップにもなるため、ユーザーに対しても負担を求める法改正だった。それでも安全・安心という警備業務の質を期待するユーザーからは異論が出なかった。
交通誘導警備が必要な建設工事の入札案件の多くは国道・県道であるため、当然、指定路線であり、検定合格者の配置が義務となる。警備会社が検定合格警備員の育成を怠り建設会社の需要に応えられないなら、これは警備業界の問題だ。
記事内でも書かれていますが、これがまかり通るならまさに警備会社も警備員も必要ないですよね。
建設会社が自社内で誘導員を抱えれば、教育も資格も何の制限も受けることなく仕事が出来てしまうことになります。
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