憲法と警備
憲法第11条(基本的人権の享有)
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法 が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
警備業務の実施の過程において、人の生命、身体、財産等を守るために 警備員の有形、無形の影響力が行使されることになります。
したがって、警備業務は、他人の権利、自由を侵害する等の行き過ぎや不当な行為を伴いやすいという側面を有しています。
特に、複雑化、高度化した現代社会においては、警備 員は契約先と第三者との複雑多様な利害関係の中に身を置くこととなり、 ちょっとした不手際等も、これが直ちに他人の権利、自由等の侵害をもたらすことになります。
このように、警備業務はその業務の特殊性から、基本的人権と極めて密接なかかわりを有しています。
「基本的人権」とは、抽象的には人間が生まれながらにして持っていると考えられる権利、人間が人間として生活していくうえにおいて、当然認められるべき基本的権利のことをいいます。
憲法は、本条において、基本的人権の保障を一般的に宣言するとともに、その固有普遍性と永久不可侵性という性格を明らかにしている。基本的人 権の「固有普遍性」とは、基本的人権は、人間として当然の天賦生来の権利であって、だれでも等しく享有する普遍的なものであるということです。
また、「永久不可侵性」とは、基本的人権は、現在の国民ばかりでなく、将来の国民も等しく享有するもので、将来永久に侵されることがないという意味です。
警備員は、基本的人権の意義と重要性を深く認識し、その業務遂行の過程において、いやしくも、他人の権利や自由を侵害することのないよう、留意することが肝要です。
憲法は、第11条以下において基本的人権についての規定を置いているが、このうち、警備業務に特に関係の深いものを挙げると、次のとおりである。
(1) 表現の自由
憲法第21条第1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と述べ、いわゆる表現の自由について規定して います。「集会」とは、共同の目的を有する多数人の一時的集合を意味し、「結社」とは、共同の目的を持って、継続的に多数人が結合している集団のことをいいます。
(2) 人身の自由
憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若 しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定してい る。これは、人身の自由の保障に関する根本原則を定めたものでず。
また、同法第33条は、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、 権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状 によらなければ、逮捕されない。」と述べ、不法の逮捕を受けない権利に ついて規定しています。
「司法官憲」・・・裁判官のことです。
「逮捕」・・・犯罪の容疑が相当確実であると思われる場合に、実力を もって身体の自由を拘束する行為のことをいいます。
(3) 不法の住居侵入、捜索及び押収を受けない自由
憲法第35条第1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、 正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」と述べ、不法の住居侵入、捜索及び押収を受けない自由について規定しています。
(4) 児童の保護
憲法第27条第3項は、「児童は、これを酷使してはならない。」としています。警備業務は、人の生命、身体、財産等を守るという重い職責を有するため、その遂行には、強い体力と精神力を必要とし、また、勤務時間も深夜にわたることもあります。このため、警備業法第14条第1項において、18歳未満の者が警備員となることを禁じています。
(5) 勤労者の団結及び団体行動権
憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定しています。
「団結する権利」とは、団体、すなわち労働組合を組織する権利をいい、 また、「団体交渉をする権利」とは、そのようにして組織された労働組合の代表者が使用者又はその団体と交渉する権利であり、「その他の団体行動をする権利」は、争議権ともいわれ、同盟罷業(ストライキ)等をする権利のことを指します。
しかし、以上のような団結権や団体交渉権も、無制限に許されるという わけではなく、公共の福祉に従うべきであることはいうまでもありません。
その権利の行使は、社会通念上、妥当な範囲内の必要がある。労働組合法第1条第2項も、この点につき、「いかなる場合においても、暴力の行使は、 労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」と規定しています。
関連ページ
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